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ノーコード開発の実用性とデジタルシフトについて

ノーコード開発とは

最近、話題となっているノーコード開発。
今回はノーコード開発について紹介していきます。

ノーコード開発とは、文字通りコード記述せずにWebサービスやアプリケーションを開発するサービスのこと指します。

これまでWebサービスの開発やアプリケーション開発には、プログラム言語を使用してソースを記述することが必須でしたが、ノーコード開発では、こういったソースの記述をせずに開発することが可能になり、プログラム言語やITスキルの知識がない非エンジニアでもサービス開発が可能になるということです。

ノーコード、また極力コードの記述を抑えるローコードと呼ばれる開発ツールの市場は大きな注目を浴びており、Googleはノーコード開発のプラットフォームであるAppSheetを買収し、Amazonもノーコードツールの「Amazon Honeycode」をリリースするなど、様々なプラットフォームが提供されており、その市場規模は2兆円規模となるとも言われています。

Webサービス開発がITエンジニア不要で可能となれば、ノーコード開発の技術は、今後のビジネスにおいても大きなブレイクスルーとなる可能性を秘めています。

ノーコード開発が注目を浴びる背景

ノーコード開発の技術は以前よりあったにも関わらず、日本ではなかなか浸透しないものでした。

ところが、DX化の推進における「2025年の崖」問題や、コロナの感染拡大による急激なデジタルシフトへの対応が必要となったことが背景となり、これらの課題解決としてノーコード開発が注目を浴びることになりました。

■2025年の崖問題
2025年の崖とは、現在DX化を進める中で、このままDXの推進を阻む課題を放置すれば 2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じる、という日本の企業が抱える問題について、総務省がレポートした内容が発端となっています。

2025年の崖の主な課題は以下のような内容です。

●レガシーシステムの問題
既存のレガシーシステムのブラックボックス化により、データ活用などDX化への対応が難しく、また保守にも多額の費用がかかっており、新しいシステムへの投資が困難な状況になっている問題。

●IT人材不足
IT人材の育成が遅れており、求人倍率も毎年上昇を続けるなど、IT人材の不足が解消されていない問題。また、そもそもITの専門でない企業では社内ナレッジの仕組みを確立させることが難しく、育成という分野でも大きく後れをとっている。

●社内ノウハウの蓄積
これまでアプリケーション開発はベンダー企業に丸投げの状態が多く、社内にノウハウが蓄積されず、DX化での課題解決においても社内で議論できず、新しい技術よりも既存システムの保守が優先されている。

これらの問題が解決できない場合、今後日本の企業はグローバルな環境で競争力を失い、日本の経済に致命的な打撃をもたらすと予想されています。


■コロナの影響によるオフラインビジネスの崩壊
また、ノーコード・ローコード開発が注目を浴びる要因には、コロナの影響も大きく作用しています。

2020年のコロナの影響は、ビジネスモデルに大きな影響を与えました。

飲食店や小売店など直接来店をともなう業種は、緊急事態宣言とともに閉店や時短営業を余儀なくされ、さらに店舗に製品を卸しているメーカー企業も、当然その影響は直接受けることになりました。
また、こういった直接的な販売活動だけでなく、対面での営業活動の制限、交通機関の利用減少など、広い範囲での経済活動に影響が広がり、
これまでのオフラインビジネスにおいては、もはや機能しなくなった、といっても過言ではなくなりました。

これまで、デジタルシフトへの必要性については様々な形で提議されてきましたが、コロナによってオフラインビジネスがそもそも機能しなくなったことで、オンライン化の必要性が未来の話ではなく、今まさに必要になってきており、企業にとってはDX化という側面だけでなく、すでに営業活動に直結した死活問題となっているのです。

ノーコード開発のメリット

ノーコード開発では、エンジニアによるソースコードの記述ではなく、すでに完成したパーツやテンプレートを組み合わせサービスを開発していくことになります。
多くのノーコードサービスでは、開発インターフェイスもドラッグ&ドロップによる視覚的な操作が可能となっており、また開発したWebサービスを実行する環境も整っているため、開発後すぐにリリースすることも可能になっています。

これらノーコード開発のメリットをまとめると、以下のようになります。

・専門的なITスキルのない非エンジニアによる開発が可能
・サービス開発のコスト・期間の削減
・様々なサービスのオンライン化への対応のしやすさ

2025年の崖やアフターコロナへの対応、またビジネスのオンライン化を早急に進めていく必要がある中、ノーコード開発によるメリットは課題解決の鍵となると期待されています。
また、これまで外部のエンジニアに依存していた開発業務からの脱却が可能となる点は、大きなメリットとなるはずです。

ノーコード開発の種類

現在のノーコード開発については、大きく3つの種類があります。

1.ビジュアルプログラミング型
ビジュアルプログラミングとは、視覚的にボタン操作やドラッグ&ドロップによって操作することによって、アプリケーションを開発するサービスになります。
アプリケーションを開発するためのCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)のようなものです。

ビジュアルプログラミングの考え方自体は、以前よりあるもので、CMSツールのWordPressやMovableTypeなどは、ノーコード開発のビジュアルプログラム型サービスと言うことができ、ECのカートシステムなどでは、MakeShopやfutureshopなどはシステムを完全にパッケージ化したノーコード型のアプリ、EC-CUBEなどはローコード型アプリと表現することが出来るかと思います。
昨今では、より進化し、スマホアプリ開発のYappliや、ECカートシステムのShopifyやBASEなどのようなビジュアルプログラム型のサービスも登場しています。

【主なサービス】
.bubble、STUDIOなど


2.スプレッドシート連携型
スプレッドシート連携型では、Googleのスプレッドシートにデータをいれていくだけで、自動的にスマホアプリを制作することができます。
エクセルベースの知見があればスマホアプリを開発ができることで注目されており、昨今ではこのタイプのサービスがどんどんリリースされています。
有名なところではGlideなどあり、他にもAirtableなど初心者向けに特化したサービスも登場しており、用途や難易度によって使い分けることが出来ます。

【主なサービス】
Glide、Airtableなど


3.ワークフロー連携型
上記の2つとは異なり、ワークフロー連携型では、Web APIとWeb APIを連携させ、色んなワークフローを自動化することができるようになるタイプのものです。
例えば、Gmailに届いたメールに添付されている画像などを、DropBoxなどのストレージサービスに自動的に格納させ、かつSlackのような社内コミュケーションアプリに通知をさせる、といったような各アプリ・サービス間をAPIで連携させ自動処理させる、といった既存のシステム連携と行うことで1つのシステム構築していくことができます。

【主なサービス】
zapier、integromatなど

ノーコード開発の課題

非常に魅力的なノーコード開発ですが、もちろん課題も残されており、以下のような課題があげられます。

・現実的には定型的な機能に限定される
・プラットフォームへの依存が高い
・コードの記述は必要ないが、エンジニア的な思考は必要

ノーコードでの開発では、予め用意されている機能をチョイスすることが前提となるため、実用性という面では簡易なシステムに限定されている、というのが現状です。

その理由の1つは、ビジネスに必要な要件はどうしても複雑になるため、その複雑な要件を全て達成することが難しい点があります。

もし、要件を満たすノーコードがあったとしても、今後の運用を想定すると、拡張性やメンテナンス性を考慮する必要がでてきます。。
例えば、ビジネスが軌道に乗り、業務や機能を拡大させたいとなった場合、現在使用しているノーコードのプラットフォームでは対応できないケースが考えられます。
この際、他社のノーコードサービスで使用したい機能が実現可能となった場合でも、互換性がないため容易に乗り換えが出来ない、といったプラットフォームへの依存が高い点が中・長期的な観点からはリスクとなってくる面もあるでしょう。

また、ソースコードを記述する必要がないといえ、サービスやサイトの機能を設計する上では、エンジニア的な思考が必要となってきます。
簡単なWEBサイトを作成する上でも、インターフェイスや機能性を織り込んでいくのは、専門的な知見やノウハウが必要になってくるため、サイトの運用に携わらない非エンジニアの人が制作するには、まだまだ現実的ではないというのが現状のレベルです。

この辺りは非エンジニアでの開発が可能であるというノーコード開発の大きなメリットと、現実との間に大きな乖離がまだまだありますね。

そういった意味では、開発現場においてノーコード開発により開発期間の短縮に利用はできるが、非エンジニアで自社のサービスを開発するのは、まだ現実的ではないというのが実情です。

ノーコード開発の実用性について

このように、ノーコードだけで複雑な要件や将来的な拡張性に対応することは難しいため、現時点では1企業がノーコードツールを直接導入するよりは、開発企業がノーコード開発を使用して企業向けのアプリを開発する、というのがメインとなっています。

しかしながら、ノーコードに実用性がない訳ではありません。
例えば、簡単なアナログ業務をノーコードで自動化出来る部分は多く存在しますし、規模感のあるのシステム開発を伴う場合に、デモアプリをノーコードで開発し、プレビューしながら要件を詰めていくなどといった使い方では、企業側にとっても、開発側にとっても、ブレの少ない効率的な開発を行うことができ利用しやすくなる、といった印象を持ちました。

また、新しいサービス展開する際にノーコード開発でスモールスタート、または試験導入するようなケースや、リリースまでのスピードを優先する場合などにおいても、ノーコードを利用することは大きなメリットとなるはずです。

コロナ渦において、リモートワークやオンライン会議が業務の中心となり、サービスの提供もオンライン化が進む中、この状況にいち早く適応し、ノーコード等の新しい技術の特性を生かして使い分けることで、業務効率化やビジネスに生かせる企業と、そうでない企業に差が出てくる時代が訪れようとしています。

デジタルシフトによって、今後の競争力はITリテラシーに依存していくといっても過言ではないかも知れません。


May 12 , 2021
T.Shinoda

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