DIGITAL BUSINESS EYE'S
DX(デジタルトランスフォーメーション)で企業はどう変化するのか? その可能性と近未来
DX(デジタルトランスフォーメーション)で企業はどう変化するのか?
今回から4回シリーズでDX(デジタルトランスフォーメーション)に関して、その可能性と近未来を
・DXとは何か?という言葉の定義から日本での導入が検討される背景、そしてその課題
・DXの導入を決めた企業とその後
・DXを業務の切り口で追う、注目されるMA/IS/FSとSCM
・DXを成功に導くために
というテーマを中心に考えていきたいと思います。
今回は、まずDXとは何か、DXが必要とされる背景とユーザー企業、ベンダー企業といったステークホルダーの視点で見るとどういう課題があるのかに関して考えをまとめてみました。
コロナ禍もあり急激に進むDX化への自社の対処の一つの視点にしていただけたら嬉しいです。
・DXとは何か?という言葉の定義から日本での導入が検討される背景、そしてその課題
・DXの導入を決めた企業とその後
・DXを業務の切り口で追う、注目されるMA/IS/FSとSCM
・DXを成功に導くために
というテーマを中心に考えていきたいと思います。
今回は、まずDXとは何か、DXが必要とされる背景とユーザー企業、ベンダー企業といったステークホルダーの視点で見るとどういう課題があるのかに関して考えをまとめてみました。
コロナ禍もあり急激に進むDX化への自社の対処の一つの視点にしていただけたら嬉しいです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か
DXの概念は意外に古く、2004年にウメオ大学教授のエリック・ストルターマン教授らが大学の機関紙に寄せた論文「Information Technology and The Good Life」で紹介されたのが最初といわれています。その概念は、「ITの浸透は、人間の生活をより良いもにする」というもので、教授らはその寄稿文で
・DXにより情報技術と現実が結びついて変化を起こす。
・デジタル技術をつんだ機器や端末が、自分の環境や行動変化に関してネットワークを介し、知らせてくれる力を持つようになる。
という趣旨を記しています。
日本で知られるようになるきっかけはIDC Japanの定義で、ここで述べられた「ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンス(経験、体験)の変革を図ることで価値を創出し、競争優位性を高める」という表現がDX=デジタル+顧客エクスペリエンス(CX)というイメージを思い浮かばせるきっかけになったかもしれません。
しかし、現在の日本での定義は、概ね「企業がITを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」という意味で使われ、DX=Digital Transformation の formation を表す「X」が当てられています。※1
※1英語表記で formation の略字として「X」をあてることがあるため。
・DXにより情報技術と現実が結びついて変化を起こす。
・デジタル技術をつんだ機器や端末が、自分の環境や行動変化に関してネットワークを介し、知らせてくれる力を持つようになる。
という趣旨を記しています。
日本で知られるようになるきっかけはIDC Japanの定義で、ここで述べられた「ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンス(経験、体験)の変革を図ることで価値を創出し、競争優位性を高める」という表現がDX=デジタル+顧客エクスペリエンス(CX)というイメージを思い浮かばせるきっかけになったかもしれません。
しかし、現在の日本での定義は、概ね「企業がITを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」という意味で使われ、DX=Digital Transformation の formation を表す「X」が当てられています。※1
※1英語表記で formation の略字として「X」をあてることがあるため。
DXが注目される理由は? ~経産省の「DXレポート」
日本でDXがにわかに注目され始めるきっかけになったのが、2018年9月に経済産業省が発表した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開」というレポートでしょう。
レポートは
その概要は以下で、
1.このままいけば、2025年までに既存の基幹システムで21年以上稼働しているものが全体の60%を超える(2015年では20%程度)。
2.IT人材不足は2025年までに43万人に爆発的に拡大(2015年では17万人が不足)。
3.さらに深刻なのは先端技術のIT技術者不足で、2025年にはSAPのERP終了とともに旧来のプログラミング言語が使えなくなる。
4.こうした状況により2025年から2030年の間に12兆円/年づつ経済損失が生じる。
5.この背景には、
a)既存システムが事業部ごとに「縦割りで」構築され、部分最適、過剰カスタマイズされることが多く、
b)システム担当者しかわからずブラックボックス化し、
c)経営者がDXを望んでも(?)現場が動かず抵抗するためなかなか進まない。
とされています。
d)上記より、経営的にデジタル敗者になり生産性が上がらず、人月によるコスト計算で既存のシステム維持費が高額化することで経営を圧迫。
こうした事態を回避し、新しい市場を創造していくためにレポートでは「DX推進システムガイドライン」を踏まえたプランニングや体制構築を産業界に推奨し、2020年から25年まで集中的に取り組ことで2026年から2030年の間に、実質GDPで130兆円分プラスの経済効果を計画しています。
レポートは
https://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180907010/20180907010.html
からのぞけますのでよかったら御覧ください。その概要は以下で、
1.このままいけば、2025年までに既存の基幹システムで21年以上稼働しているものが全体の60%を超える(2015年では20%程度)。
2.IT人材不足は2025年までに43万人に爆発的に拡大(2015年では17万人が不足)。
3.さらに深刻なのは先端技術のIT技術者不足で、2025年にはSAPのERP終了とともに旧来のプログラミング言語が使えなくなる。
4.こうした状況により2025年から2030年の間に12兆円/年づつ経済損失が生じる。
5.この背景には、
a)既存システムが事業部ごとに「縦割りで」構築され、部分最適、過剰カスタマイズされることが多く、
b)システム担当者しかわからずブラックボックス化し、
c)経営者がDXを望んでも(?)現場が動かず抵抗するためなかなか進まない。
とされています。
d)上記より、経営的にデジタル敗者になり生産性が上がらず、人月によるコスト計算で既存のシステム維持費が高額化することで経営を圧迫。
こうした事態を回避し、新しい市場を創造していくためにレポートでは「DX推進システムガイドライン」を踏まえたプランニングや体制構築を産業界に推奨し、2020年から25年まで集中的に取り組ことで2026年から2030年の間に、実質GDPで130兆円分プラスの経済効果を計画しています。
ITベンダー側に突き付けられるDX化に向けた大きな課題
前述の話からするとDX化は非常にバラ色の未来を表現しているように思えますが、その現実はどうなのでしょうか。
私の考えでは、WEB制作とそれに関わる開発、基幹系の業務システムの開発やシステム保守メンテナンスを担当している会社、ITサービスの提供会社などは1つの岐路を迎えることになります。
今回の国(経産省)が示した指針は、グローバル社会、情報化社会で勝ち残るためのヒントでもありますが厳しい現実への対応を迫るものでもあります。
まず、一般的にWEB制作/システム開発会社の多くは「ウォーターフォール型」である。という点です。
つまり、顧客にこうしたほうがよりシステムがよくなりますよ。という「提案を行う」のではなく、あくまでもユーザー企業に「言われたものをつくります」というベンダー企業が多い点です。
ベンダー企業の経営者が仮に「弊社に任せていただければ貴社の生産性を上げるために、顧客の体験価値(CX)を向上させるために~というシステムを開発しますよ」と言ったところで、システム設計者や開発者がそうできるとは限りません。
むしろ過去の経験から
「そうした新しい価値を提案する機能は実装できません」
「実装するためのシステム要件を教えてください」
と平気で(悪気なしに)話されることでしょう。(苦笑
また、従来型のシステム開発やWEB制作のお見積りは作業工数を前提に行われますし、当然購買するユーザー企業も作業内容が変わっても「昨年の予算がこのぐらいだったから」という言葉で交渉を行うかもしれません。
そして何よりも最新の技術で新しいサービスを行った方々(新しい技術の有資格者ではなく)の給与水準も高く、需要も多いので対応できる方はほんのわずかなユーザー企業の対応で手いっぱいとなります。
要するに、新たな価値を実現するための技術的背景やその組み合わせを行える技術者(もしくは経験豊富な設計者)が圧倒的に足りていないのです。
これは前述した課題背景の2.でも表現されています。
私の考えでは、WEB制作とそれに関わる開発、基幹系の業務システムの開発やシステム保守メンテナンスを担当している会社、ITサービスの提供会社などは1つの岐路を迎えることになります。
今回の国(経産省)が示した指針は、グローバル社会、情報化社会で勝ち残るためのヒントでもありますが厳しい現実への対応を迫るものでもあります。
まず、一般的にWEB制作/システム開発会社の多くは「ウォーターフォール型」である。という点です。
つまり、顧客にこうしたほうがよりシステムがよくなりますよ。という「提案を行う」のではなく、あくまでもユーザー企業に「言われたものをつくります」というベンダー企業が多い点です。
ベンダー企業の経営者が仮に「弊社に任せていただければ貴社の生産性を上げるために、顧客の体験価値(CX)を向上させるために~というシステムを開発しますよ」と言ったところで、システム設計者や開発者がそうできるとは限りません。
むしろ過去の経験から
「そうした新しい価値を提案する機能は実装できません」
「実装するためのシステム要件を教えてください」
と平気で(悪気なしに)話されることでしょう。(苦笑
また、従来型のシステム開発やWEB制作のお見積りは作業工数を前提に行われますし、当然購買するユーザー企業も作業内容が変わっても「昨年の予算がこのぐらいだったから」という言葉で交渉を行うかもしれません。
そして何よりも最新の技術で新しいサービスを行った方々(新しい技術の有資格者ではなく)の給与水準も高く、需要も多いので対応できる方はほんのわずかなユーザー企業の対応で手いっぱいとなります。
要するに、新たな価値を実現するための技術的背景やその組み合わせを行える技術者(もしくは経験豊富な設計者)が圧倒的に足りていないのです。
これは前述した課題背景の2.でも表現されています。
動き出している技術者育成と教育界
コロナ禍はいやおうなしにユーザー企業やベンダー企業に、よりDX化への対応を迫っています。
実は、DXを見据えたIT教育は再度自民党が政権を奪取した後から進み始め、国公立でも小学校や大学院、公立中高一貫校を中心にプログラム教育や数学(特に空間認知能力、図形)を思考する能力への集中的な教育なども行われています。
また、公立会津大学のように旧共産圏のプログラミング技術者を教授として積極的に招聘し、世界のグローバル大学700にランクインする大学も出てきています。
さらにIT企業側との動きでも、
長らく取り組んできたものでは
■ NTTコミュニケーションズ社のドットコムマスターと大学での取り組み
コロナ後の課題解決としての
■ ソフトバンクと大正大学との講座連携
実は、DXを見据えたIT教育は再度自民党が政権を奪取した後から進み始め、国公立でも小学校や大学院、公立中高一貫校を中心にプログラム教育や数学(特に空間認知能力、図形)を思考する能力への集中的な教育なども行われています。
また、公立会津大学のように旧共産圏のプログラミング技術者を教授として積極的に招聘し、世界のグローバル大学700にランクインする大学も出てきています。
さらにIT企業側との動きでも、
長らく取り組んできたものでは
■ NTTコミュニケーションズ社のドットコムマスターと大学での取り組み
https://www.ntt.com/shines/posts/b-t_20201102.html
コロナ後の課題解決としての
■ ソフトバンクと大正大学との講座連携
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2020/20201026_01/
にも表れ始めており、産官学の積極的な連携の結果として今後も増えてくると思われます。既にDXに向け動き出している大手企業、各業種と今後
日立、味の素、東芝、NTT、ソフトバンク、三越伊勢丹、凸版といった大手企業も続々とDXへの取り組みを明言し、進めていく過程を公開する姿勢を高めています。
また、製薬業界でのDX、小売のDX、保険のDX、商社のDXといったように各業種でのデジタルトランスフォーメーションへの取り組みも始まりました。
弊社自身もかかわりのある企業や業種での取り組みも始まり、これまでのようなウォーターフォール中心というよりは一緒に知恵を出し合いながら進めていこうという機運も高まっているように見受けます。
DX化への対応の知恵はまさにこれから。
前例があるようでない、こうした取り組みの先にあるものは何か。
今後は、公表されているデータや事例とそうしたもののモデル化を中心にしながら更にシリーズ的にこのテーマを掘り下げていきたいと思っています。
また、製薬業界でのDX、小売のDX、保険のDX、商社のDXといったように各業種でのデジタルトランスフォーメーションへの取り組みも始まりました。
弊社自身もかかわりのある企業や業種での取り組みも始まり、これまでのようなウォーターフォール中心というよりは一緒に知恵を出し合いながら進めていこうという機運も高まっているように見受けます。
DX化への対応の知恵はまさにこれから。
前例があるようでない、こうした取り組みの先にあるものは何か。
今後は、公表されているデータや事例とそうしたもののモデル化を中心にしながら更にシリーズ的にこのテーマを掘り下げていきたいと思っています。
December 1 , 2020
S.Kurasawa