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20分の1の時代、DXは私たちに何をもたらすのか?

2:8の法則

新年あけましておめでとうございます。
いよいよ2021年が始まりました。コロナ禍にかまけて本質的な「変化の波」を見逃しそうな昨年でしたが、コロナが常態化したことで次の未来がはっきりしてきた感じがします。
昔々、コンサルタント会社入社時、当時のお客様は「人事部門や研修部門の方々」が多かったのですが、その時によくお聞きしたこと、それは2:8の法則でした。管理職になるであろう「2」の方とそれを支える「8」の方々で、それを予測して従業員を雇用するというもの。
当時ホワイトカラーの採用はアビリティより、コンピテンスを重視した「職能資格制度」を軸にした雇用慣行が中心で、ある一定以上の学歴でアビリティを確認し、コンピテンス能力を図る「物差し」を基により画一的に採用を行っていました。
(昨今はコンピテンスの中でも「革新性」や「忠誠心」などの項目がより重要視される傾向にあるといわれています。)
さて「2:8」の法則ですが、これからはどうなるのでしょうか?
もし職場がいわゆるホワイトカラーだとするとおそらく限りなく「1:19」に近づくのだと思っています。
それはなぜか?ヒントは統計学にあります。

信頼限界と信頼区間

信頼限界と信頼区間
統計学に、信頼限界と信頼区間という考え方があります。
例えば、夜の街で飲食するとコロナになる確率がA.「100人中1人に発生する」もB.「10,000人中100人に発生する」でも頻度は0.01となります。
しかし、実数としてのコロナになる人数は違うでしょう。つまり、
A.の場合は「0人や2人に発生する」の場合(つまり、頻度0.00から0.02)が多いかもしれませんが、
B.の場合は「0人や200人に発生する」の場合が多い、ということはなくまずなく、99人や101人(頻度0.0099から頻度0.0101)が多いかもしれません。
このA.B.の頻度の差異(A.は0.02、B.は0.0002)=長さを信頼区間といい、上記のようにA.の方が信頼区間は長くなります。
信頼区間が長ければ長いほど不確実性が大きくなります。逆に信頼区間が短ければ相対的に確実性が高まる。ともいえるでしょう。
そしてその信頼区間にある確率は95%で限界に達します。これを信頼限界といいます。
つまり、母数を10,000人から120,000,000人(日本の人口)、さらには6,100,000,000人(世界の人口)に増やしたとしてもこの信頼区間にない確率がどうしても5%は発生してしまうのです。

多様な軸の必要性

多様な人種の必要性
おいおい、正月から数学の話かよ。とお思いの方、話したいのはここからです。
例えば、検索して欲しいものに当たる確率。私が知りうる限り、リスティング広告の精度は、ここ数年で格段に向上しました。
0.2%が2%程度にまでは概ね精度向上しているでしょう。(精度で10倍程度)
2016年に発表したgoogleの検索回数の指標で、漢字を含む検索回数は年2兆回といわれています。 
ということは、2020年では20兆回に達したのかもしれませんが、現実は少し違いそうです。
日本のリスティング広告市場がこの4年で10倍になったか?といえばそうではありません。せいぜい2倍弱です。
当然広告にならない空き在庫も増えたのだ。というご指摘もあろうかと思いますが、それだけではないでしょう。
検索精度を上げるための項目(=SEO用の対策項目)は噂の域を出ないもの含めて200以上あるといわれています。
つまり、1つの軸、「◯◯」というキーワードで検索されたというだけではなく、検索された時間やエリア、過去に選択されたWEBページなど、様々な軸での掛け合わせでマッチング精度を上げていると思われます。
先ほどのコロナの話も然りです。
単純に「夜の街で飲食する」という要因だけではなく、「慢性疾患の既往歴がある」「男性」「50歳以上」など様々な要因と思われるものを組み合わせてデータ化することでその精度を上げているのです。
つまり、単純な分析数もさることながら多様な軸を組み合わせ判断することが重要ということです。

リアル流通に多様性というベネフィットはない?

実は、データの数もさることながらこうした多様な軸も分析に必要だとしたら、その多様な軸とやらを皆さんは持ち合わせているでしょうか?
人事部門の方、マーケ部門の方、そして、僕含めた経営者の方々、いかがですか?
YouTubeはOKでもTVのサブスクがうまくいかないのはなぜか?
AmazonプライムやSpotifyはサブスクOKでも、KINTOはなぜうまくいかないのか。
その1つの答えに「多様性の軸を提供できているか否か」があるのではないでしょうか。
コロナ禍が、リアル流通はECに比べて多様性がない。ということをいみじくも証明しました。
流通の有効なベネフィットは即時性だったのです。

多様性と変わるマーケティング

高級入浴剤を買うのは、30代の独身女性がターゲットといわれて調査すれば、そうでない多くの方々も出現します。
実は、既婚男性が結構買っている。・・・でも気持ち、わかる気がします。(笑
マイクロマーケティング、LGBTの方々、推しのYoTuber、興味関心の軸は多様化しています。
その中で大きな塊のみを探し続けるやり方、1億人に広告して約1%の購買をとる。そのために無駄な9990万人の認知をどぶに捨てる。
漏斗の口のようなマーケティングから多様性の軸と巨大なトランザクション母数で精緻化を進めて購入した方のプロファイルに近い方々へアプローチを枝葉のように伸ばしていく。
そんな富士山の裾野のようなマーケティングに変化しているのかもしれません。

20分の1の不確実性を考える時代の到来

DXは、こうした多様性にアクセスできるネットワークと巨大なデジタルトランザクション母数から成り立っていく知的共有財産(=ここではこれをAIとします)というインフラと考えます。
そしてDX自体が何かを生むのではなく、DXを活用してどうするかが企業にとっても、社会にとっても、個人にとっても非常に大切なことなのだとも。

DXというインフラが整っていけば、問題解決の95%に近づくことができるかもしれません。
しかし、それでも不確実性5%の壁は突破できないかもしれません。
そして、そこに大いに興味をそそられます。
人間とDXに支えられて生まれたAIとの間を分かつもの、それがなにか、この5%、20分の1の中にあるように思えてなりません。


January 7 , 2021
S.Kurasawa

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