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コロナ禍で業務はどうかわるのか!? 実は重要、「組織の記憶理論」とシェアードメンタルモデル(SMM)

コロナ禍で模索される「組織の記憶理論」とシェアードメンタルモデル(SMM)

コロナも少し落ち着いてきましたね。
上場企業の決算、国の発表も出そろいました。改めて4月~6月のクウォーターが如何に荒波だったかを実感します。
知人経営者の「この8月末にやっとつかの間の休日が取れた。」という記事を読んで「心からお疲れ様」という気持ちになりました。
さて、5月ぐらいが底だったと思われるネット業界ですが、どうも優勝劣敗という状況のようです。
つまり、業績のいい会社と悪い会社とがはっきりしてくる。という感じでしょうか。不況下あるあるですが、顧客数が絞られ寡占化が進む。
ただ、業界としては今後もより必要とされるのでサービスのすそ野も広がっているように見えます。
こうした中でコロナ前とコロナ後で企業の業務内容にどのような変化が生まれているのでしょうか。
興味深いその謎を今回は自社の速報データで読み解きたいと思います。
データを読み解くにあたり下敷きに置きたい理論、それが「組織の記憶理論」、特にシェアードメンタルモデル(SMM)です。

組織の記憶理論とシェアードメンタルモデル(SMM)、トランザクティブメモリーシステム(TMS)

組織の記憶理論とは、組織として獲得した知恵を保存し、引き出せるようにするための方法についてまとめられた理論です。今回はその中でも引き出し方に焦点を絞ってご紹介いたします。
知恵の引き出し方には2つの概念が存在します。1つはシェアードメンタルモデル(SMM)。もう1つはトランザクティブメモリーシステム(TMS)です。

① シェアード メンタル モデル(SMM)
  SMMとは、組織が効果的に知を引き出すための理論の1つで、知や情報が頭の中で(組織の中で)どのように表現されるかを説明するのに想起される認知概念です。代表的なものが、
   a) 業務システムを使うためのマニュアルなどの手順書など仕事、技術、設備などに関するメンバー間の共通認識を促進するもの(=タスクSMM) 
   b) この場合、彼ならこうする、といったメンバー間の好み、強みや弱み、役割などの共通認識を促進するもの(=チームSMM) 
  です。
② トランザクティブ メモリー システム(TMS)
  TMSとは、who knows what (誰が何を知っているか)を知っていることを促進するもので、「専門性」と「正確性」などでindex化されます。

コロナ禍で時間が減った業務内容と増えた業務内容

シェアードメンタルモデル(SMM)、コロナ禍前後の業務時間割合
先日弊社の全従業員の業務時間の分析を行いました。
2020年1月-3月(つまりコロナでの移動制限前)と同年6月~8月の3か月間ずつです。
以下の表のとおりでした。(ここでは総時間ではなくあくまでも時間割合で表現しています。)
一番減ったのは移動時間でした。ダントツの減少時間割合になりましたね。
また、残念ながらというべきか面談時間割合も若干減ってます。(涙
では何が増えたのか?
③諸連絡、④会議、⑤打合せという情報共有の時間です。見事なくらいに移動時間がこの時間に置き換わってます。
弊社での③諸連絡は、社内外の連絡を指し、主には1対1での情報共有作業になります。
④会議は会社公式のもの、⑤打合せは必要な時に行う情報共有を指し、複数参加のものを指します。
現在④⑤はほとんどウェブ会議で行われるようになっています。

シェアードメンタルモデル(SMM)の活用事例

シェアードメンタルモデル(SMM)と業務時間割合の変化
弊社の数字傾向、想像通りでしたか?

前述した、シェアードメンタルモデル(SMM)の概念をうまく活用し、TMSも高める代表的な方法に以下の2つがあります。

① 顔を合わせてのインフォーマルな交流会
  コロナ前で言えば、セミナー後の交流会や飲み会、現在では、ウェビナーやウェブ飲みなどでしょうか。
  効果性を高めるために外してはならないポイントが1つあります。
  それは、「顔が見える」という点です。
  顔が見えるグループとそうでないグループではその情報共有内容の正確性や伝播性に大きな差が出ることがわかっています。

② ブレスト
  ブレストはよくアイディアを出すための手法といわれますが、実はこれまでの研究では「必ずしも効率性はよくない。」という結果も出ています。
  例えば、10人の集団でアイディアをブレストするのと、10人がそれぞれ個別にアイディアを出して足し合わせるのではアイディアの質も量も後者が高くなる傾向があります。(実は弊社は後者を好みよく活用します)
  つまり、より大事なのは、タスクSMM(=話し合いの手順)の活用、つまり、効果性を高めるためにブレスト内容やプロセスを規定することでしょう。

上記2つを積極的に活用している企業事例があります。
①の変型版は、大手メーカーで実施しているという1人当たり上限金額ありの飲み会の推奨。
要は就業時間外で飲み代をおごるから話ししよう。それが部下への指導目的だったり同僚への相談だったりです。
②の例は、大手代理店の壁一面ホワイトボードで、いつでも思い立ったらアイディアを共有しよう。というものでしょうか。

こうしたコミュニケーションの前提は、対面で会える。会っている。でした。
しかし、コロナ禍で人と人が会うことが制限されるようになるとこうした方法では知の引き出し効果は半減するかもしれません。
また、一緒に営業に出かけた時に、席が隣なので振り向いてすぐに、情報共有していたことで組織としての知の共有が進み、生産性が上がっていた点が知らず知らずにじわじわとなくなっていくかもしれません。

会議や打合せ時間を増やせばいいのか?

コロナ後で会議や打合せの時間が増えた。という事実。1つの小さな会社の現象でしたが、いやいやうちは違うよ。という話もあるでしょう。
増えた要因を細かくヒアリングしていないので、
・単にみんな不安だったのでは
・業務オペレーションが変わって、そりゃ。会議増えるでしょ。
といわれるかもしれません。

一方で、上部の図のように、その割合がこの3か月、ほぼ一定割合で推移している点も見逃せません。

そして、弊社は共有方法=SMMを見直し始めました。新たなルールを元にその質的向上に、弊社は軸足を変化させてきました。
その変化は確実に表れていると見えます。①と⑤がそれです。

単なる3か月平均では変化が確認されにくい現象。しかし、現場は今の環境に合わせアジャストしてきています。

尊敬する知人からのメールにこんな一文がありました。

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働き方改革をコロナにさせられていますね 笑
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・・・ほんとです。(苦笑


September 3 , 2020
S.Kurasawa

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