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DIGITAL BUSINESS EYE'S

テクノロジーが生み出す新しい価値観

コロナがもたらしたデジタル化へのシフト

2020年は、大きな変化の年でした。

新型コロナウィルスの影響で、人との接触機会が極端に制限され、プライベートでもビジネスでも、外出をしない生活が前提となりました。

学校や職場には通わず、お店やレジャー施設などは営業を規制され、生活にマスクや消毒がかかせないようになり、私たちは移動という手段をかなり制限された中で生活することになり、新しい生活様式、そして働き方について順応しなければいけない1年となりました。

そして、この制限の中で私たちの生活は、デジタル化へ急激に舵を取ることになったのです。

「場所」と「移動」から解放されたビジネスシーン

外出自粛という現実問題に対して、「場所を選ばない働き方」という形が社会的に認知され、テレワークやリモート会議は、今や当たり前のように行われています。
合わせて、書面のデジタル化もテレワークには必要不可欠となり、一気にデジタル化が進んだ分野と言えます。

このように、これまでの旧来のビジネス様式からデジタル化へのシフトは、必要と感じつつも未知の影響も含め、慎重にならざるを得なかったところ、外出自粛という現実問題の前に、半強制的にシフトせざるを得ず、日本のビジネスシーンが一気にデジタル化されたといっても過言ではないでしょう。

2020年は外出自粛という制限から「場所」と「移動」という概念を、デジタルによって解放した年でもありました。
そこにはインターネットやリモート会議システムを活用した、新しいテクノロジーが活用されていることは言うまでもありません。

今後は、AIや量子コンピューター、IoTといった技術が、ビジネスシーンや働き方に大きな影響をあたえることは容易に想像することができます。
すでにDX化に向けて、検討段階に入っている企業も多く、ビッグデータの活用、またデータを収集するためのIoTについても、今後は当たり前の技術となっていくことでしょう。

そして、新しいテクノロジーは、新しい市場価値を生み出すことになっていきます。

コンピューティングの新しい価値

皆さんが想像している、AIや量子コンピューターはどのようなものでしょうか。

AIは、すでに一部のサービスでも活用されているように、ビッグデータを元に機械学習によって様々な回答を打ち出すことができるイメージでしょうか。

また量子コンピューターにおいては、従来のコンピューターとは桁違いの計算性能を持ち、現代の常識を一変させるようなコンピューター、といった印象などでしょうか。

それらは間違った見解ではありませんが、現在、研究開発されているAIや量子コンピューターは、実は従来のアルゴリズムやコンピューティングとは大きく異なる点があります。

それは、AIや量子コンピューターではじき出される答えは、様々なパターンを元にした、より正解であろうという回答になる、という点です。

極端な例で言うと、従来のコンピューターでは、1+1= という入力に対し、2という回答を100%出力します。

しかし、AIや量子コンピューターでは、全てのパターンの中から、より正解であろう回答として2を出力する、ということになります。

つまり、ごく稀な可能性でAIや量子コンピューターは、2以外の回答も出す可能性がある、ということになります。

それって、欠陥があるのでは、と思われる方もいると思いますが、実はこの2以外の答えが出せる点というのが、従来のコンピューターでは出せない答えであり、新しく市場価値として求められている答えでもあるのです。

100%の回答ではない価値

ではなぜ、従来のコンピューターと、AIや量子コンピューターでは、このような差が出るのか、簡単にその仕組みの違いについて説明していきます。

まず、従来のコンピューターとは、ビットと呼ばれるデータの箱の中に、0か1しか入力することが出来ません。
つまり、2ビットの箱の中には、00、01、10、11、のいずれかのデータしか入力することが出来ない、ということになります。
これによって、ビット数(桁数)が増えても、そこに入力される値は単一となり、1は1(2進数では0001)、8は8(2進数では1000)という入力値対して、アルゴリズム(プログラム)によって、計算が行われます。
今回の場合では、1+1=という入力に対して、四則演算のアルゴリズムが働き、2という回答を導き出す、というのが従来型のコンピューターの方式となります。


これに対して、量子コンピューターでは、0か1か、そのどちらか、という3パターンを入力することが出来ます。
つまり、量子コンピューターのビットの中には、2ビットの箱の中の場合には、00、01、10、11、の4つ全ての値が入力され、その全てについて並行で計算する、という方式になります。

そして、その全ての計算パターンの中から、最も正解であろう回答を導き出す、というのが量子コンピューターの考え方になります。

つまり、逆に言うと、量子コンピューターでは、従来のコンピューターのように、100%の回答が出せない、ということであり、あくまで「より正解に近いであろう」回答が結果として出力されることになります。

多くのパターンの中から、より正解に近い回答を導くというのはAIについても同様になります。

ビッグデータを活用し、あらゆるパターンの中から、最も正解値に近いものを機械学習によって導き出すということは、稀に最適ではないパターンも選択される可能性があります。
また、AIの弱点として、機械が学習する上で、どうしてそのような結果になったのか、根拠となる部分を誰も認識できない、ということも明らかになっています。

しかし、これらを容認する、ということは、これまでのビジネスシーンでは考えられなかったことであり、新しい市場価値として、これまでの従来型コンピューターによって弾き出される2という回答ではなく、2以外の回答にも価値が求められている、ということが、根底的に大きな変化なのです。

テクノロジーによる新しい価値とは

ここで、不完全な回答にどのような価値があるのか、疑問に思われた方もいるかと思います。

今回の1+1=の例では、キチンとアルゴリズム化できるものを、AIや量子コンピューターに置き換えたことが、その疑問となる要因となっており、従来のコンピューターが得意な分野を、全てAIや量子コンピューターに置き換える必要はない、というのが本来の考え方です。

AIや量子コンピューターが得意な分野は、予測や組み合わせの最適化といった、従来のアルゴリズムでは再現しにくいものとなります。

予測という不確かなデータについては、100%の回答を得るためのアルゴリズムは不向きであり、むしろ複数のパターンの中から最適解を出すためのアルゴリズムが必要となります。
また、量子コンピューターのように複数の計算を平行で行うことで、複雑な組み合わせについての処理速度が飛躍的に向上します。

つまり、DX化やオートメーション化においては、この不確実で根拠の見えない回答に価値を見出し、容認することが必要となるのです。

その先には、例えば分子構造を解析し、分子の組み合わせ処理を行う中で、新しい素材の分子構造をAIと量子コンピューターで作成されることも、現実となる日がくるかも知れません。


December 8 , 2020
T.Shinoda

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